2016年 お世話になったアルバム(1位〜25位)


ジョン・キューザックです。

これから僕が今年好きだったアルバムを、カウントダウン形式で紹介するよ。ベストな25枚さ。
音楽配信サービスでアルバムを聞けるのはありがたいけど、レコードショップに行くとそこでは拾えなかったような音楽との出会いがあったりして、アナログな行為も大事だよ。よかったら僕のお店、『チャンピオンシップ・ヴァイナル』にもみんな来てくれ。」

…という『ハイ・フィディリティ』ごっこを40過ぎてもまだやっているのはどうかと思いつつ、書いてみます。今年はいいアルバムがたくさんあって充実した1年でした。


25. 南波志帆『meets sparkjoy』

自らがタワレコード内に立てたレーベルからの初アルバム。曲はバラエティに富んでいるけれど、生楽器によるバンドサウンドの統一感が出て、曲ではなくアルバムとして最高作になっていると思う。頭の回転が速すぎるMCも最高だけど、やはり声の響きの良さが宝物。
南波志帆 『meets sparkjoy』トレーラー - YouTube


24. AmiinAAvalon

アーケイドファイアの高揚感や、シガーロスみたいなスケールの大きな曲を持つアイドル2人組のファーストアルバム。俗っぽいアイドルポップではないけれど、難しくなく、素直にいいアルバム。エレピの刻みと、クリーントーンのギターの響きだけで宇宙の広がりを感じさせた静かな「Cosmos」みたいな曲があるところが信頼できる。
amiina 『Drop』MV - YouTube
amiinA『Canvas』Album ver. - YouTube


23. The Divine Comedy『Foreverland』

ニール・ハノンのバンド、6年ぶりのアルバム。なんでもラップトップ上で音楽が作れてしまう昨今において、UK産チェンバーポップは後継者不足で消えゆく芸術にあるのかもしれないけれど、でもわたしにとって「ブリティッシュポップ」と言えば、こういったサウンドなんよ。大仰なサウンドに、ユーモアとシニカルをまぶす相性の良さ。
The Divine Comedy - Catherine The Great - YouTube
The Divine Comedy - How Can You Leave Me On My Own - YouTube


22. NAO 『For All We Know』

ディスクロージャーの曲でもフィーチャーされていたロンドン出身のシンガーソングライターのファースト。アリーヤっぽいところもあるけれど、シルキーなヴォーカルと、エレクトリックなファンクネスの絡みがとにかくかっこいい。
Nao - Get To Know Ya - YouTube
NAO - Girlfriend (Official Video) - YouTube


21.Babaganouj『Pillar of Light』

オーストラリアのガレージポップバンド。バブガニューシュと読むよう。2016年において、90年代的なザラザラしたインディーギターポップが新鮮に響いたし、シンガロングスタイルの楽曲の気恥ずかしさもどこかまぶしい。初めてバンドを組んだ時のような、音を出すのが楽しくて仕方がないという感じの若くてポジティブなフィーリングに溢れてるのがいい。格好つけたり斜に構えたりする必要がないのは愛されるよね。
Babaganouj / Pillar of Light - Trailer - YouTube
Babaganouj - Do Rite With Me Tonite (Official Video) - YouTube


20. Brad Mehldau Trio『Blues And Ballads』

最初に聞いたメルドーは、『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』のサントラで、ロマチンティックなソナチネやスロージャズが収録されていてとても気に入っていたのだけど、それを思い起こさせるような久々にゆったりとした雰囲気のアルバムでよく聞いた。終盤のポール・マッカートニー曲の解釈もオーソドックスだけど、ちょっとブルーなフィーリングがしんみんりといい。
Brad Mehldau Trio - Little Person [Official Audio] - YouTube


19. 原田知世『恋愛小説2 - 若葉のころ』

伊藤ゴローとのカバー企画第二弾は、邦楽集。瑞々しくも深みをたたえた知世さんのヴォーカルが素晴らしい。誰もが知っている名曲を腰の座ったアレンジでゆったり聞かせる。「やさしさに包まれたなら」の名曲ぷりに改めて気づいたり、曲に新しい息を吹き込むカヴァーの醍醐味がありました。
原田知世 - 『恋愛小説2~若葉のころ』ダイジェスト・ムービー - YouTube
原田知世 - September - YouTube


18. スカート『CALL』

スカートこと澤部渡が、夜中にtwitterのタイムラインにポツリと残す、「ちんぽ」の文字。なぜ真夜中にわざわざ「ちんぽ」と言わなければいけないのか。彼は「ちんぽ」と書き記す使命を感じているのだと思うし、また同じように良いポップミュージックを書き残さないといけないという、衝動と使命を自分の中に宿しているのだと思う。今作は彼が書き残さなければならないと思った、美しい「ちんぽ」ミュージックが見事に鳴っている。
スカート 3rd Album''CALL'' ダイジェスト・トレーラー - YouTube
スカート / CALL 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】 - YouTube


17. Teenage Fanclub 『Here』

もう何にも似ない、いつものティーンエイジ・ファンクラブらしい音楽を奏でるだけでエヴァーグリーンになってしまう。ずるい。そしてリヴァース・クオモ君も近々この域に到達するのだろう。
Teenage Fanclub - I'm In Love - YouTube
Teenage Fanclub - Thin Air - YouTube


16. Beyonce『Lemonade』

ソウルフルというより、ほぼ激情というべきエモーショナルなヴォーカルが、ジャニス・ジョップリンを彷彿させ本当に素晴らしい。そんな声が練り上げられまくったバラエティに富んだバックトラックに乗って、何度も鳥肌が立つような瞬間がある。アッコさんもこちらの方向に進んでいればちょうカッコよくなれたのではと思う。
Beyoncé - Sorry (Video) - YouTube


15. Michael Kiwanuka『Love &Hate』

ロンドンで育ったウガンダ人アーティストのセカンド。ビル・ウィザースやオーティス・レディングのようないにしえのソウル、ブルース。でもそこにノスタルジックな思いがあるわけではなく、彼の表現の必要性に迫られて鳴っている感じがいい。美しいメロディと味のあるヴォーカルが素晴らしいです。
Michael Kiwanuka - Love & Hate (Official Music Video) - YouTube


14. Directorsound『Into the Night Blue』

ニック・パーマーのソロユニットの6thアルバム。40年代の映画音楽、ジャズのエッセンスに絡んでくるラップスティールやマリンバなどの南国テイストのリラックス感がとても心地いい。ノスタルジックな暖かい演奏。海の近くにあるホテルの夜のプールサイドで、こんなジャズバンドが演奏してたらほんとに最高でしょうね。
Directorsound - Umbrellas Of Beckholmen by Tona Serenad Records | Free Listening on SoundCloud
Directorsound – Into The Night Blue by Tona Serenad Records | Free Listening on SoundCloud


13. Negiccoティー・フォー・スリー』

「曲がいいアイドル」という枠を超え、本気で「名曲」のレベルを掴み取ろうとしてきた心意気だけでも胸が熱くなってしまう。「ねぎ、ねぎ、ねぎっこ!」と歌ってデビューした自分たちがここまで来るとは本人たちも予想してなかっただろう。もちろんおじさんもです。アイドルポップスのひとつの到達点だと思う。
Negicco 3rd Album 「ティー・フォー・スリー」全曲試聴トレイラー映像 - YouTube


12. Chance the Rapper『Coloring Book』

まず名前とルックスがいい。あといつも笑顔を絶やさないようなラップとビートもいい。能天気ではない絶妙なポジティブなフィーリング。うじうじしたオタクは全く彼に勝てないよね。
Chance The Rapper - No Problem ( Coloring Book) - YouTube


11. Solange『A Seat at the Table』

リズムとベースとほんの少しの上物、そして極上のゆらぎを持った声。The weekendもそうですけど、少ない音数でもそれだけで音楽をひっぱることができるし、少ないからこそ豊かに響く。エモーショナルで熱量の多い姉の盤よりついついこちらをリピートしていました。おじさんなので。
Solange - Don't Touch My Hair ft. Sampha (Official Music Video) - YouTube


10. 蓮沼執太『メロディーズ』

クセがなく、軽やかで耳馴染みのいいポップミュージック。でも奥底には軽やかに気持良くサウンドを奏でることへ執着と実践がある。タペストリーのように美しく編み上げられたメロディとアレンジに耳をそばだてているだけで嬉しい気持ちになる。
蓮沼執太『メロディーズ』MV「RAW TOWN」 - YouTube


9. Andy Shauf『The Party』

カナダのシンガソングライターのサード。ある晩のパーティに集まった様々な人物を描いたアルバムだそう。一聴70年代ポップスをベースにした耳障りのいいポップスのように聞こえるけれど、エリオット・スミスのようには美しく昇華されない、めんどくさそうな自意識と沈殿した孤独がへばりつき、軽く流せない妙なフックがあって何度もリピートした。
Andy Shauf - "The Magician" - YouTube
Andy Shauf - "Quite Like You" - YouTube


8. Anderson .Paak『Malibu』

Dr.Dre絡みで注目された才人。一見穏やかなトーンの中に、内に込められた衝動がストレートに伝わってくるような展開があったり、とてもスリリング。今年いちばん聞いたHIP HOP、R&Bのアルバム。
Anderson .Paak - The Bird - YouTube


7. Whitney 『Light Upon The Lake』

2014年に解散したスミス・ウェスタンズ(好きでしたよ)のギタリストとドラマーが結成したバンドのファースト。2016年、ギターポップの最良の形。今後も何年も残っていくアルバムだと思う。歌っているドラマーのジュリアンは、スミス・ウェスタンズでは曲を書いてなかったそうで、まさに隠れていた才能。
Whitney - Golden Days (Official Video) - YouTube
Whitney - No Matter Where We Go (Official Video) - YouTube


6. Radiohead『A Moon Shaped Pool』

新機軸のないいつものレディオヘッド。かといってもちろんそこに怠惰があるわけではなく、ついにレディオヘッドのフォーマットを完成させたような彼岸がある。不安と癒しが同居するオーラに背筋を正される思い。
Radiohead - Daydreaming - YouTube
Radiohead - Burn The Witch - YouTube


5. The Lemon Twigs『Do Hollywood』

ロングアイランド出身の10代の兄弟デュオ。父親の膨大な名盤コレクションを聞いて育ったそうだけど、聞いてるだけではそれらをものにした音楽は作れないわけで、気が遠くなるほどの実践があったはず。ビートルズ、クイーン、ボウイ、ビーチボーイズザ・フー、70年代プログレなんかのオマージュを無邪気に横断するとっ散らかった楽しさと、絶妙にチープな感じが見事にマッチングしてる。ライブビデオを見るとビッグスターの一節を挟みこんできたり、ジェリーフィッシュのようなポップマニアぷりと先人達へのリスペクトがありつつ同時に、昔のブラーのようなそれらを喰ってやるという振る舞いがほんと最高です。
The Lemon Twigs - These Words - YouTube
The Lemon Twigs - Live at Amoeba - YouTube


4. David Bowie『Blackstar』

野心的なジャズサウンドに若返ったような張りのあるヴォイスを乗せて、最後のアルバムに「Blackstar」と名付けて去っていくなんて、こんな様になる去り方、彼にしかできない。
David Bowie - Blackstar (Video) - YouTube


3. コトリンゴ『「この世界の片隅に」 オリジナルサウンドトラック』

コトリンゴさんの映画劇伴は3回目だけど、過去の音楽フォーマットに則った過去作に比べ、今回はコトリンゴ色が全開のつくり。「控えめさ」が却って強い個性になるコトリンゴの作風だけど、邪魔せず印象に残る映画とのマッチングも素晴らしかった。『みぎてのうた』で、「貴方などこの世界の切れっ端にすぎないのだから〜だからいつでも用意さるる貴方の居場所 どこにでも宿る愛」なんて歌詞をコトリンゴさんに囁くように歌われるだけでクるよね。映画の補正がかかってるかもしれないけど、音楽単体として聞いても素晴らしいと思う。サントラをかけながら休みの日に簡単なごはんをつくるのも楽しくできます。
映画『この世界の片隅に』予告編 - YouTube


2. KIRINJI『ネオ』

イントロが開けて最初に聞こえてくるのが、シネマンディアス宇多丸のラップだし、曲によって変わるヴォーカルやバラエティに富んだ曲を聴いてると、キリンジらしさを刻印してるのは今や兄の歌詞と、ちょっとしたコード進行だけって気もするけど、新しい自由を手にしたフレッシュさも漲っていて、いまバンドが乗っている感じがよく伝わってくる。多幸感に溢れたコトリンゴ作曲の「日々是観光」(今年のベストトラックです)、70年代ポップの「ネンネコ」、祝いの言葉に呪いをかける「あの娘のバースデイ」の流れが好きすぎる。
KIRINJI『ネオ』ダイジェスト・ムービー - YouTube
KIRINJI - The Great Journey feat. RHYMESTER - YouTube


1. John Cunningham『Fell』

リバプール出身のシンガーソングライター、14年ぶりのアルバム。ビートルズから寂しさだけを抽出して作ったような黄昏たポップスだけど、本家を超えるようなその純度に震えてしまう。これが2016年を代表する「音」かというと決してそんなことはないけど、こんなに完成されたポップスも年単位でめったに出会えないサウンドであることも間違いないわけで、本当に素晴らしいです。クラウドファンディングで作られたそうだけど、形に残せてよかった。
John Cunningham - We Get So We Don't Know - YouTube
John Cunningham - "Frozen In Time" (From the 2016 album Fell) - YouTube