2016年 好きな映画BEST10

今年はそんなに本数を見れませんでしたが、そんな中で見れてよかったなと思う、10本です。


1. イット・フォローズ

セックスをすると「それ」が追ってくる、という興味の引き方がすごいB級っぽいなと思って見てみると、もちろんホラー的な恐怖演出もよく練られてると思いますが、最終的には愛すること、生きることという根源的な問いにたどり着く語り口が見事。生きることは死に近づくことだし、それは生まれながらに背負った十字架であるけれども、だからこそ今の生を全うしようと思いました。撮影も美しい。あと明らかにふつうの劇伴で当てないようなジャンル分けしずらい音楽も、わからないながらもばっちり「不穏」というのが、なんかセンスの塊だね、と思いました。


2. この世界の片隅に

戦争の怖さを、その最中を生きる市井の人物の強さを描くのに、ユーモアが有効であるという気づき。今後も折を見て語られ続けるであろうアニメーションの傑作だと思います。


3. エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に

野球の奨学制度で入ってきた、いわゆる’学校の勝ち組’の、学校生活がはじまる前の3日間を描く。青春映画ではバカで粗野な人物として描かれることの多い、ジョックスたちを、繊細でちゃんと血が通った人物として見せるのが良かった。個人的には所謂ジンクスをばっさり切り捨てるセリフがあるところにシビれました。物事は必然でできている。


4. 死霊館 エンフィールド事件

ジャパニーズホラー的な恐怖表現も吸収しつつ、アメリカ的なパワースタイルも見せつける緩急自在な演出力に、怖がりながらもすごいなと唸りました。ジャンルはホラーですけど、ハリウッドアクション映画を見た後のようなダイナミズムがあり、広く見られるといいなと思います。


5. ヘイトフル・エイト

「黒人がリンカーンから受け取った手紙」など意外性のあるものでの興味の引っ張り方がタランティーノ監督はやはり上手いなと感じます。個人的にはどんどん好きになっていく監督です。


6. シン・ゴジラ

庵野&樋口コンビの『巨神兵東京に現わる』がすこしギャグの入った特撮破壊表現をしていたこともあり、公開前は斜に構えたゴジラのオマージュをやるのかと思っていたら、まさかの(?)正統派ゴジラで良い意味で面を喰らったことは否めませんが、でもこちらの予想を超える仕上がりで嬉しく見ました。


7. ちはやふる 上の句

「繋がれ!」と謳う主人公のちはやが仲間を召喚する媒介でしかなくなってくる下の句より、太一の成長物語を丁寧に描く上の句が良かったです。都内のライバル校の主将である、須藤のシャープな感じも良くて、映画のいいスパイスになっていると感じました。


8. ゴーストバスターズ

84年『ゴーストバスターズ』の女性版リメイク。CGの進歩は、ありえない現象であっても、なるべく実写に近い、リアリティを持った表現を目指すということを前提として進んできたように思いますが、今作でのバトルシーンは、80年代のケレン味のある極彩色にあふれた「当時のSFX表現」をCGでやる、という通常とは真逆の方法論で用いられており、見た目にも新鮮だったし、何より楽しく見れました。悪魔のようなものに取り憑かれた人物が宙を舞う姿に、『デビル・スピーク』を思ったりしましたが、取り憑かれても陽気、というところにバカの強さをみました。


9. シング・ストリート

少年たちがバンドを組んで成長する物語。ラストは賛否両論ありましたが、わたしはあれでいいんじゃないかと思います。たぶん良識のある大人ほど「非」に見えるんじゃないかと思うのですが、多くの人から見たら正解ではない、バカで間違えた選択であっても、君が思う道を歩むことそのものが大事なのだという監督の主張にそうだよねとなったりしました。ちなみにテーマが類似していて同時期に公開された、『グッバイ、サマー』も好きです。


10.ドント・ブリーズ

盗みに入った家に住む盲目の老人に返り討ちにあう話、と書くと自業自得じゃんと思うけど、とにかく老人が本気で殺しにくるのでやっぱシャレにならん!『パニックルーム』とは真逆で、盗みに入った方に肩入れしてしまう視点が新鮮だし、詰め込まれたシチュエーションアイデアの豊富さと練られ具合も面白かった。


その他、「ライト/オフ」「ブレアウイッチ」なども素晴らしく、新しい作家のつくるホラーが充実していたと思いました。それはつまり新しい才能がきちんといるということで、今後の活躍も楽しみです。また良質な邦画も見受けられたのも嬉しい収穫でした。「アイアムアヒーロー」「ヒメアノ〜ル」なんかは良かったです。映画はたくさんのスタッフが携わるもので、スタッフが各々の目の前の仕事を一生懸命やっていても、全体を見る監督、プロデューサーの力量がないとやはりいい作品にはならないわけで、ちゃんと見通せる人もいるということがわかって嬉しかったです。

来年は映画をもっと作品を見たいと思います。
では、みなさま良いお年を。