プロフィールと『JUNO』の話


 自身の自己紹介のところに、「『JUNO』に出て来た里親候補のダメ夫。あんな感じです。」と書いている。単純に映画『JUNO』を見た時に、その彼のキャラクターに自分が似てるなと思っただけなんだけどね。

 高校生で妊娠してしまったジュノが里親探しをしていると、30代のCM音楽家マークが名乗りを挙げる。マークはバンド時代にメルヴィンズの前座をやったことが自慢で、「ロックの黄金期は1993年」と主張し、ソニックユースによるカーペンターズの『スーパースター』カバーバージョンが最高の曲だとし、アリスインチェインズ(*1)なんかのTシャツを着ている男。しかもホラー映画が大好きときてる。

 僕もホラー映画が大好きだし、有名バンドの前座をしたことはないけれど今もバンドはやっている。CM音楽家ではないけれど、CM制作の仕事をして音楽の提案をする時もある(*2)。そして映画を見るずっと以前に、僕のバンドメンバーとソニックユースの『スーパースター』の話をしていて、「あのどんよりとした兄妹を一番理解して、彼らの気分に寄り添うような演奏をしてるのがソニックユースのカヴァーだよな!ああいうのをトリュビュートって言うんだよ。」みたいな話をして盛上がった経験もある。だからマークとジュノが一緒にレコードを聴いたり、ホラー映画を見たりして仲良くなる映画の途中までは、「あーこの里親、オレだわー」とゲラゲラ笑っていた。

 しかし劇中ジュノはふと気づいてしまう。マークは自分の青春時代に聞いたもの、影響を受けたもの、つまり青春時代の幻想をいつまでも引きずった大人になれてない子供なんだと。そして、ジュノはマークに言い放つ。「ソニックユースなんてあんなものただの雑音よ!」
これはソニックユースを揶揄したものというより、「マーク、あんたなんかまだ子供よ!」と意味合いとして響く。そしてマークは自分がまだ赤ん坊を迎える準備など出来てない子供なんだと悟り、劇中からフェイドアウトしてしまう。

 さっきまで、感情移入してた里親が少女から全否定!僕ももう30代半ばになるのだけど、つくづくまだガキンチョだとうなだれてしまう事もある。改めてそれを言われた気がして、これはちょっと堪えた…。ちなみに僕は今も独身で、まだまだマークから抜け出せていない。困ったな、という日々を送っています。どうぞよろしくお願いします。

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 マークに対してジュノという主人公は、意思がはっきりしていて、決断力があり、行動力があり、妊娠したことを早々に親御さんに話せる勇気もある。仕事が出来る女子である。これで高校生かよ!?とも思うが、彼女は、ストリッパーをやりつつ書いていたBlogの面白さが認められ、本作の脚本を書く事になったディアブロ・コディさんの投影だろう。ちゃきちゃきとして自立心旺盛な彼女が入れ込んだ『JUNO』の裏テーマは、「男子諸君、大人になる準備は出来てますか?」ということである。ま、映画公開からだいぶ経つわけで今さらな話なんだけど。

Sonic Youth『SuperStar』

(*1)90年代に人気のあったグランジバンド
(*2)CM音楽の作曲だけでは、あんな家に住めるほど儲からないような気もするんだけどな。CDを出してる菅野ようこぐらいまで行けばアレだけど。アメリカは違うのかしら。