2013年 お世話になったアルバム(1位〜10位)

12月は、1年を振り返るのに適した月だと思います。2月だとまだ早いですし、10月でももうひと声!と言った感じですので、やはり12月ですね。なので、前回に引き続き、今年のアルバムを振り返りたいと思います。今年よく聞いた、たいへんお世話になったアルバム、10枚です。

10. 徳永憲『ねじまき』

8枚目のアルバム。いつからか素っ頓狂な歌い方や、皮肉に満ちた歌詞は影を潜め、ますます落ち着いてきている印象ですが、「無邪気な子猫を見た 不思議な光景だ 僕より早く死ぬのに あんなにも幼い」みたいな少しだけドキッとするような彼の視線は変わらずだと思います。フォーク、カントリーが下敷きにありながらも、曲は他にあまり似たものがないように感じますが、それでもポップで十分聞きやすいので、よくリピートしたアルバムです。


9. 大森靖子『絶対少女』

ラッパーさんのようにカジュアルで新鮮な彼女の歌詞が、リズムも自在に変化する独特のメロディーに載せて歌っているので、最初は掴みどころがないように感じましたが、聞き慣れてくると、ふっと口ずさんでしまう中毒性があることに気付きました。「君と映画」は代表作のひとつになりそうな名曲ですね。タンポポのカヴァー、「I & YOU & I & YOU & I」も完全に自分の曲として消化していて、新鮮に聴けました。


8. BMX BANDITS『In Space』

グラスゴーのインディポップバンド、5年ぶりのフルアルバム。2012年の12月に出たのですが、今年も引き続きよく聴きました。ダグラスさんのヴォーカルやアレンジは相変わらず人懐っこく愛らしいです。60〜70年代ソフトロックへの憧れを鳴らし続けていたら、いつの間にか先人達に並ぶような成熟度を纏うようになった気もします。ポップアルバムとしての完成度もすごく高いです。ダグラスさんのようなおじさんになれたらいいなとよく思いますが、ただのほほんとしてればいいわけではなく、気合いを入れてきちんと精進してるのだと感じます。今年ひっそりリリースされた「Beautiful Friend」EPのB面、「Children Song (With Miette-One) 」も名曲で、まだまだこれからの活動も楽しみにしています。


7. lyrical school『Date course』


改名して、T-Palette Recordsに移ってからのファーストフルアルバム。これはトータルアルバムとしてすごくいいですね。明るい昼間のように楽しく進む前半から、夜中になって内省したり、寂しさを吐露したような後半の流れは、わたしたちの一日の流れに沿うようでもあります。そしてこのアルバムのすごいところは、ラストナンバーに「Myかわいい日常たち」という、情緒的な後半から一転するこの少しコミカルで明るいナンバーを持って来ているところで、その中で彼女達はそんな普通な毎日さえも「かわいい」とし、またそこに帰ってきて「ただいま!」と笑って宣言する。その逞しさにわたしはどうにも涙してしまうのでした。江口寿史さんが描かれたアルバムジャケットもいいですね。


6. BELLRING少女ハート『BedHead』

若い女の子のラフなヴォーカルを載せるのが、クラシカルなブリティッシュポップというところがニッチでずるいなと思いますが、セルジュ・ゲンズブールのプロデュース作に似たコケティッシュさを感じさせてすごくいいです。そして音楽に対するその本気具合に、日本のポップスシーンに楔を打ち込むような野心が感じられて、どうにも燃えます。


5. The Pastels『Slow Summits』


オリジナルとしては16年ぶり、テニスコーツとの共演作からも4年ぶりのアルバム。スティーヴン・パステルさんらしい緩いグルーヴ感はありますが、明るいメロディのいい曲が、きちんとしたクオリティでプロデュースされていて、エヴァーグリーン的な魅力のあるポップスアルバムになっていると思います。全曲いいですね。あと全然ヘタウマじゃないですよ。(歌はアレですけど)


4. Negicco『Melody palette』


Negiccoという響きの土っぽさがまるでない、昨年の『PS4U』を引き継ぐようなクオリティの高いシティポップスアルバム。制服よりもパーティドレスが似合いそうな曲を持つアイドルも今は珍しいのではないでしょうか。アイドルのアルバムというより、60年代、70年代のガールズグループミュージックの後継者のような、オーセンティックな趣きがあっていいです。爽やかなメロディがとにかく素晴らしいですが、ライブは、本人たちの朴訥としたキャラクターもあって、ハッピーなヴァイブスに溢れて最高にほっこりします。


3. Vampire Weekend『Modern Vampires of the City』

3枚目のフルアルバム。ニューウェイブ的なタイトなノリは少し抑えめですが、磨きがかかったメロディとアレンジの素晴らしさに却って胸が高鳴りました。エズラ・グーニクのメロディは頭でっかちなところがなくて、彼の生理的なものだけで紡いでいるだけのナチュラルさがあるのに、こんなにすごい曲になってしまうところは奇跡に近いとすら思います。どたばた叩くドラムも不思議と曲にフィットして、リンゴ・スターのように完璧だと思います。


2. 私立恵比寿中学『中人』


本人たちのかわいらしさだけで既に満点なんですが、アルバムの方も、大人と子供を行き来する年頃の機微を捉えた繊細さ、学校でのおフザケ感、でも根っこにある真面目さを行ったり来たりする曲と歌詞のバラエティがあって、それが自分の中にある色んな感情を引っ張って来てくれるようで、聴いていて楽しいですね。それはともかく、かわいいので満点です。1テイクで撮影された、「手をつなごう」のMVは今年一番のアイドルMVでした。


1. 花澤香菜『claire』
「happy endings」
「星空☆ディスティネーション」
1990年代後半に注目されたポスト渋谷系作家陣の逆襲とも言われた、花澤さんのファーストアルバム(若い世代の作家陣も参加されてますが)。どの曲もJ-POPSとしてのクオリティの高さが圧倒的ですし、それに載るふんわりとして優しい花澤さんのヴォーカルがたいへんキュートで癒されます。アルバムの2月に出たこのアルバムのナチュラルで愛らしいトーンが、竹達彩奈さんのアルバムともリンクし、Negiccoさんのアルバムの方向性を決めさせ、そして、わたしの2013年のモードを決定づけたところがあるので、一位にしました。おめでとうございますどういたしまして。

次回は、お世話になったアイドルポップス曲、映画の総括をするかもしれません。では。
ねじまき絶対少女BMX Bandits in Spacedate courseBedHead
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