2014年お世話になったアルバム(11位〜20位)

今年も一年を総括する時しか書いていませんが、自意識がとまらないため、今年よく聞いた、お世話になったアルバム20枚を書いてみたいと思います。今回は11位から20位です。


20. Nothing 「Guilty of Everything」

フィラデルフィア出身のバンドの1stアルバム。今年のシューゲイザー系のアルバムではいちばん聞きました。しかしメンバーのほとんどが全身にタトゥーを入れていて、この手のバンドにしては珍しいと思ったら、ヴォーカルの方はもともとパンクバンドを組んでいたようです。(ちなみに身内の方と喧嘩して傷害と殺人未遂の容疑で逮捕されたこともあるとか。これでアルバムタイトルが、「Guilty of Everything」ってすごいですね…。)それがどうしてこのようなサウンドを手がけるようになったのか不思議ですが、シューゲイザーの体裁をとりながら、甘さに沈殿しすぎることなく、ざらつきを残したギターサウンドや、強弱法に90年代オルタナバンドの影響も多分に感じさせるところが新鮮だし、ポップな聞きやすさもあります。タワレコの店員だったら「ラブレス meets サイアミーズドリーム」みたいなことをPOPに書くんじゃないでしょうか(DLで買ったので知りませんが)。Kurt Vile、The War On Drugsを手がけているJeff Zeiglerさんがプロデュースを手がけています。


19. 蓮沼執太フィル「時が奏でる」

フィルーハーモニー的な編成をとりながら、現代的な洗練されたセンスでまとめられたポップアルバム。優しげな男女ヴォーカルに、時折差し込まれる環ROYのラップ。はねるリズムに、生き生きとしたピアノ、パーカッション、ストリングス、ホーンが鳥のさえずりのように控えめに、時に束になって鳴り響く。木々の間に差し込む光のように心地よいです。


18. Sondre Lerche「Please」

ノルウェーの青年のニューアルバム。フランク・シナトラのようないにしえのポピュラーミュージックに対する愛情が底にあるけれど、レトロスペクティブに陥らず、自分なりに解釈して、そこに新鮮なサウンドをマッチさせようとする冒険と心意気が好きでアルバムが出るたびに聞いているんですが、今回はその傾向がより強く出たアルバムだと思います。「Phantom Punch」での元気のよさを取り戻しているし、時にセクシーな表情もみせる。アニマルコレクティブやグリズリーベアと共振するようなアレンジやコーラスワークが施されているところも微笑ましいです。


17. ナンバタタン「ガールズ・レテル・トーク

南波志帆さん+タルトタタンさんの合体ユニットのアルバム。最初は南波志帆さんの声の良さと噛み合ってないのでは?と思いましたけど、それは今まで聞いたことないことのない南波さんの声というだけで、聞き返してるうちに新しい南波さんの魅力もすっかり好きになってしまいました。楽曲もふぇのたす本体のアルバムより、こちらの方が冴えているのではと思うほど充実しています。「ナンバガ解散、マジか!」というつぶやきも吹き飛ぶ、SNS依存を揶揄した「コミュニケーション過剰です」、「ぱっぱ」など発語の快感にも溢れています。


16. Superfood「Don’T Say That」

バーミング出身バンドの1stアルバム。初期ブラーやスーパーグラスブリットポップ遺伝子が2014年にも生き延びているところが何より嬉しいけど、曲によってペイブメントのような90sUSインディーバンドも好きですアピールもするところが愛らしいです。今どきマンチェスターサウンドに正面から対峙せんとする、「You Can Believe」なんかすごくいいじゃないですか。先人と比べてしまうとまだ物足りなさもあるけれど、キラリと光るような瞬間もたびたびあって、これからもっと良くなるんだろうなと期待しています。


15. Temples「Sun Structures」

最初はデビューアルバムとは思えないほど、腰の座ったサマー・オブ・ラブなサイケサウンドにびっくりしつつ笑ってしまって放置してたんですけど、やっぱり気になって何度か視聴を繰り返して、秋になってようやく買いました。新しさなど皆無ですけど、めちゃめちゃ曲が書けていて、サウンドのチョイスの的確さっぷりに、何度も、「正解!」と関口宏ばりに指差してしまう瞬間が訪れる。何よりジェームス・バックショー君のヴォーカルスタイルに「らしさ」が現れてるところがすごい。何を食べて育ったんでしょうか。未発表曲集(良かったです)を出して活動が終わってしまうThe Coralと入れ替わるようにして、こんなバンドが登場するのも時の移ろいを感じさせます。


14. 星野みちる「E・I・E・N VOYAGE」

星野みちるさんのセカンドアルバム。今年はじめて知ったんですけど、こんなに曲が書ける人がAKB48でアイドルをやってたなんて信じられん。80年代アイドルポップスや、当時周辺のシティポップスからの伝統的なメロディーラインを完全に自分のものにしているし、60sガールズポップスの理解も深そう。何よりこのアルバムには、星野さん作曲ではないけれど、「マジック・アワー」という傑作があって、スタイルだけを踏襲した既存のモータウン的なアイドルポップスをはるか彼方に追いやってしまうほどの、狂騒と、切なさが共存するド本命アイドルモータウンポップス。小西康陽さんが半ば冗談としても、「スクーターズを抜いて、日本でいちばん好きなアーティスト」と公の場で言い切ってしまうほどのことはあります。AKB48のレトロ路線曲、「ラブラドール・レトリバー」、「春風ピアニッシモ」と並べて聞いても不思議と違和感がなく、いつか本店のメイン曲を書いてもおかしくないのでは?と想像したりします。ありえないかもしれないですけど、星野みちるさんが、トレイシー・ウルフマン「Break away」風にカヴァーした「恋するフォーチュンクッキー」を聞くとそんな想像をより逞しくさせます。


13. Fireflies「In Dreams」

シカゴ出身のライト・ミトニク君のユニット、ファイヤーフライズの3rdアルバム。キラキラしたギターと、浮遊感のあるシンセと、弱々しいヴォーカルが奏でる、かつて腐るほど聞いた絵に描いたようなドリーミーなインディポップアルバムだけど、めっけもん的に良いです。歌われるのが失恋と、夢の中だけでは続く恋という、もやしっ子マインドに溢れたものだけれど、聞くと一緒に殻に閉じこもりたくなる静謐な美しさがあります。ちなみに「KIRA KIRA」という曲があって、日本語の「キラキラ」のことなのかな?と思って、検索をかけたら、「KIRA KIRA」というギャルAVメーカーのサイトがトップにきていました。まさか、お前…。


12. ミツメ「ささやき」

インディーバンド然としたギターと、ベースのファンクネスですこしだけステップさせるけど、低温で虚ろなヴァーカルが全体を覆っている。個人的には久々にギターの感じが好きでよく聞いたアルバム。


11. Tycho「Awake」

ドリーミーで美しい世界観は変わらず、今作からベースとドラムを加えてトリオ編成になったようで、より生演奏の度合いが強くなったけど、そこがすごくいいです。特にギアチェンジしてドライブしはじめた時の気持ちよさはバンドならではという感じがします。時の夜中に聞いても、昼間に聞いてもまどろみをもたらす最高のアンビエント・ミュージック。

残りの10枚はまた次回に。では。


Guilty of Everything時が奏でる
Pleaseガールズ・レテル・トーク(通常盤)
ドント・セイ・ザットSun Structures
E・I・E・N VOYAGEIn Dreams(歌詞対訳/ボーナストラック9曲のダウンロードカードつき)
ささやきAwake