『愛を読む人』


 1958年のドイツ。15歳のマイケルは、具合の悪いところを助けてくれた21歳年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ちる。だが、ある日、ハンナは姿を消してしまう。8年後、2人は戦時中の罪を裁く法廷で、見学に訪れた法科大学生と、裁かれる被告人の1人として再会する。
 ベルンハルト・シュリンクの世界的な大ベストセラー『朗読者』の映画化で、ケイト・ウィンスレットの主演女優賞受賞をはじめ今年のアカデミー賞をにぎわした感動作。15歳の時に恋に落ちた21歳年上の女性とホロコースト裁判で再会した主人公が、無期懲役で服役中の彼女と本の朗読を通して愛を確かめ合う。『めぐりあう時間たち』のダルドリー監督が描く"無償の愛"の物語。(物語と解説:『映画生活』より)

 映画の出来としては十分素晴らしいものだと思う。監督の演出、物語の進め方、役者の演技、撮影、編集、衣裳、音楽。それはどれも上質で、いかにこの物語を伝えるかに腐心したかが窺える。
 最大の欠点としては、ベルリンの物語でありながら、喋るのも、読む本も英語だと言う事。ドイツなのにみんな英語って、どこの世界だ?と違和感を持ってしまった。特に本を読む所「'The'じゃねぇだろ!w」と心の中で突っ込んでしまった。それを否定すると今回の企画がなりたたないし、気にしなければ気にしないで済むところでもあるかも知れないけど。
 映画としては良く出来ていても物語としては、観るひとによって好き嫌いを分けるものかも知れない。それは、中盤のケイト・ウィンスレッド自身の尊厳を懸けた人生を変える決断の部分。そしてそれを受けての主人公マイケルの判断。ここにノレるかどうかで鑑賞感が変わってくると思う。
 僕はそこに「え〜、マジで〜?」と思ってしまい、そこからは最後まで二人の行動にイライラしてしまった。自身で解決出来ないことを各々が抱え込んだまま誰にも相談せず、正しくないことばかりやって人に迷惑をかけ、全然成長しない要領の悪い2人に見えてしまった。
 テープを送りまくる前にやることあんだろ!それだけ本を読みながらも、本の物語から学ぶものはないのか!弁護士のクセにその要領を得ない話し方は何だ!(NYのところ)第一弁護士たるものが、そんな行動でいいのか!真実を打ち明ける相手がそいつじゃドン引きされるだけだろ!教会に言って懺悔した方がマシなんじゃねぇの?(物語としてはそれでいいんでしょうけど…)などなどを思ってしまった。
 しかし、これは主人公の行動への僕の感想であって、勿論僕が思うように話が進むわけではない。これはそういう2人の物語であって、映画はその物語を伝えるために十分機能している。それをどう捉えるか、観客自身の立ち位置を考える意味で一度鑑賞をお勧めしたい映画。