『カールじいさんの空飛ぶ家』


 3D吹替上映でみました。 僕が3Dの映画をみるのは、おそらく83年の『ジョーズ3』以来であって、ということは、僕は26年ぶりに3Dメガネを装着したことになる。26年ぶりの3Dメガネを手にしてとてもわくわくしましたが、いざ装着してみるとメガネはたいへん大きく、不格好なものであった。 「メガネ男子」はモテの対象して女子たちの心を掴むこともあるとおもいますが、「3Dメガネ男子」ではあまりモテないだろうとおもった。モテツールとしても活用できる3Dメガネができることを強く希望します。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart 2』で描かれた2015年の未来では、ちょう立体的な「JAWS 19」が上映され、看板まで3Dで表現されているけれど、このままいけばロバート・ゼメキスの描いた未来像は本当に実現されるのではないかと思った。そういえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』には、敵役ビフの手下にもいつも3Dメガネを装着している若者(役名も「3D」)もいたな、そんなことを思い出してたりしてる間に、『それでは3Dメガネをかけてください』という案内が出て、老いも若きもみな一斉に装着!そして装着という儀式が、劇場のテンションを一気に高める。僕はといえば、「映画泥棒も飛び出すの?まさか、アレも飛び出すのか!」と違うテンションの上がり方をしてしまった(映画泥棒は飛び出しませんでした)。映画の3Dは、飛び出して驚かすというよりは、手前と後ろの奥行きをしっかり感じさせるように作られていました。
 僕は『カールじいさんの空飛ぶ家』の宣伝で謳っていたプロット、「妻と長年住んで思い出のつまった家が差し押さえられることになり、たまらなくなったカールじいさんが風船をつけて、家ごと空に飛び立つのであった」という話をたいへん気に入っていた。自分の力でできる精一杯が、家と一緒に飛び立つこと。なんてロマンティックなじいさんなんだ!と思った。老いてなおロマンティックが止まらないのである。 しかし、映画がはじまるとその部分のプロットは、テンポよく描いて、時間的にはあっさり済ませてしまっているのでびっくりした(でもとても上手なまとめ方)。残りの1時間以上何を描くのかとおもったら、新天地へ向かうじいさんの冒険譚であった。新天地に向かうにはじいさんだって冒険をしなければいけないのである。その活劇ぶりをたいへん楽しくみました。
 ピクサーの映画の特徴のひとつに過去の名作へのオマージュというのがある。 『ウォーリー』にも様々なオマージュが登場しましたが、今回も、『スターウォーズ』、『インディジョーンズ』といった映画からのオマージュ、そしてコンラッドの『闇の奥』(『地獄の黙示録』)、『グエムル』(!?)を思い起こさせるモチーフが巧みに無理なく取り込まれていて感心しました。 そして何より、宮崎駿先生へのリスペクトっぷりをつよく感じました。 今作の製作総指揮であり、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジョン・ラセターさんが、宮崎駿先生を崇拝し、勝手に弟子を名乗っているくらいなので、その影響が大きいのではないかと思った。 家が空を飛ぶという描写は、『ハウルの動く城』をどうしても思い起こさせるし、見せ場である空中での活劇シークエンスは、先生のもっとも得意するところである。 そして今作のそれはとてもよくできていて、特にいよいよ家が空に飛び立つ時の高揚感、気持ちよさ。いろんな人の視点から「飛び立つようす」をみせていき、とんでもない事が起きている感じを表現する。い、家がもちあがったー。わくわくする素晴らしいシーンだとおもった。
 また、先生オマージュ視点でみてみると、犬が罠にはめられ閉じ込められてしまった時の絶妙な苦い表情なども、『カリオストロの城』でルパンの罠にはめられた警官がみせる「あーっ!」という絶妙な表情を参考にしたのかなと邪推できてしまうほどである。 しかしこのようなオマージュも、基本となるストーリーがしっかりしているから嫌みにみえないのだなと思った。
 劇場は家族連れも多く、終始ちびっこたちの笑い声やびっくりした声で溢れていた。きっとちびっこたちはたっぷり満足し、「パパ、たのしかった!」と報告し、予告篇で告知された『トイストーリー3』も見に行きたいとおねだりすることであろうとおもう。 そしてパパは、『トイストーリー3』にこどもたちを連れていくために、またがんばって働くのだ。
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ひさしぶりのエントリーになりました。久しぶりになったのは個人的な理由でリハビリをしているからなのですが、またちまちまと書いていきたいとおもいますので、偶然訪れられた方はよろしくお願いいたします。